ベニテングタケの働き

ベニテングタケ（Amanita Muscaria）は、その鮮やかな赤色と白い斑点で知られるキノコです。古来よりシャーマニックな儀式での使用されてきた歴史の他に、ベニテングタケの安全性で説明しているような効果、痛みの軽減、リラックス、うつ、不眠の改善が発見されいます。

今回の記事では、ベニテングタケが体内でどのようなメカニズムで働くのかを詳しく解説していきます。

GABA受容体アゴニスト

ベニテングタケの主成分であるムシモールは、抑制系の神経伝達物質であるGABA（ガンマアミノ酪酸）に作動性の物質です。ムシモールは脳に広く分布するGABA-A受容体（イオンチャンネル型受容体）と結合し、抑うつ、眠気、リラックス感が生じると考えられます。

GAB-A受容体はイオンチャネル型受容体で、塩化物イオン (Cl-イオン)を主に透過させます。 GAB-A受容体はαサブユニット、βサブユニット、γサブユニット、δサブユニット、εサブユニットなどによって構成される五量体であり、脳部位によってサブユニットの発現が異なっています。

ムシモールがGABA-A受容体に結合すると、以下のようなプロセスが起こり、鎮静作用が生じます：

1. 塩化物イオンの流入

GABA-A受容体にGABAが結合すると、塩化物イオンチャンネルが開き、細胞内への塩化物イオンの流入が促進されます。

2. 細胞の興奮性の抑制

塩化物イオンの流入により、細胞の内部が負になります（膜電位が下がる）。この状態では、細胞が興奮するのが難しくなり、神経活動が抑制されます。

3. 神経伝達物質の放出抑制

GABA-A受容体の活性化は、神経細胞からの興奮性神経伝達物質の放出を抑制します。これにより、神経系の興奮性が低下し、鎮静作用が生じます。

ムシモールはGABAと同じ部位に結合し、神経活動を抑制して鎮静作用をもたらすメカニズムを活性化します。このプロセスは、不安やストレスなどの症状を緩和し、リラックスや眠気を促す効果があります。

ムシモールは血液脳関門（BBB）を通過する？

近年、GABA入り機能性食品がコンビニなどでも多く見られるようになりましたが、実はGABAは食べて脳に到達しGABA受容体に結合することはありません。それは、血液脳関門（BBB）が存在するためです。しかし、ムシモールはこの関門を通過すると言われており、口から摂取すると吸収され血液循環に入り脳に到達します。

一方、GABA受容体は腸にも存在し、口から摂取したGABAは腸内のGABA受容体に作用することで、脳と腸の連携（腸脳相関）によって脳へ働くとも考えられています。

※ 血液脳関門（BBB）は、脳と血液循環系の間に存在する生体機能で、脳と血液循環系を分離する多層の障壁です。これにより、脳内の環境を安定化させ、脳を外部からの有害物質や微生物から保護します。