ベニテングタケの安全性


赤い傘に白い水玉模様で、見た目から毒キノコを連想させるベニテングタケは、世界各地に自生しています。  

和名はベニテングタケ、英名はFly Agaric、学名はAmanita Muscaria、毒性はそれほど強くはないものの、旨味があり、食べ過ぎると腹痛や下痢が生じます。
米国ではAmanita Mushroom(アマニタマッシュルーム)として、ドリンク、グミ、チョコレート、ティンクチャー、べイプなどの製品に利用されて大変注目を浴びています。 

 

本ブログでは、ベニテングタケに含まれる成分と安全性について取り上げています。

 

ベニテングタケに含まれる成分 

ベニテングタケに含まれる栄養素は、育った環境、年数、状態により異なりますが、タンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミンB群(チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、パントテン酸、ナイアシン、ナイアシンアミド、葉酸、コバラミン)、エルゴステロール、ビオチン、フィトキノン、トコフェロールなどが豊富に含まれています。 

 

そして、ベニテングタケに含まれる、イボテン酸、ムシモール、ムスカリン、ムスカゾンは、毒成分として知られています。実際に、イボテン酸はハエを寄せ付けず退治することから、害虫駆除剤としても使用されてきました。  

しかし、近年、ベニテングタケに含有する毒とみなされていた成分は、非常に有益な働きがあることで注目されています。

 

イボテン酸とムシモール

イボテン酸はムシモールのプロドラックとして機能し、脱炭酸されて約10〜20%がムシモールに変換されます。

ムシモールは摂取量が53mgで精神活性作用が見られ、摂取量が93mgでは強い吐き気と嘔吐を含む中毒症状を引き起こします(Chilton and Ott 1975)。 

 

ボランティアによる人を対象とした実験で、効果はムシモール7.5〜10mg、またはイボテン酸50〜90mgを摂取した後、約1時間後に効果が現れ、持続時間は3〜4時間ですが、一部の被験者では10〜24時間まで持続がみられました(Chilton and Ott 1975)。

 

 

ムスカリン

1869年にヨーロッパ原産のベニテングタケから単離された成分で、ベニテングタケの主要成分であると考えられていました(英名のアマニタ・ムスカリアはムスカリンから派生しています)。

ムスカリンは副交感神経に作用し、心拍数の低下、血圧の低下、嘔吐、下痢、徐脈、気管支分泌、涙、気管支痙攣(喘息のような呼吸)、唾液分泌、瞳孔の収縮、視界のぼやけなどを引き起こすことで知られています。

ムスカゾン

ムスカゾンもヨーロッパ原産のベニテングタケから単離された成分です。ムスカゾンは、イボテン酸が紫外線の分解によって生じる物質で、他の成分と比較して、薬理学的活性は低いです。

 

 

 

近年のベニテングタケのブームに伴い、EUにおける使用用途や副作用について調べた2023年の文献があります。フェイスブックなどのソーシャルメディアのコメント5600件を分析し、使用目的(n = 250)、摂取された形態(n = 198)、副作用(n = 236)を集計されました。

 

ベニテングタケの使用目的

男女で使用目的に差があるようです。
女性の摂取グループでは、ベニテングタケを摂取する主な目的は痛みの軽減と皮膚問題の緩和であり、男性ではストレスの軽減、うつ症状の重症化の軽減、および不眠の軽減が主な目的でした(p < 0.001)。

ベニテングタケの摂取形態

女性はティンクチャー、男性は乾燥キノコを利用することが多いようです(p < 0.001)。

ベニテングタケの副作用

副作用については、女性は主に頭痛を報告し、男性は吐気、嘔吐、腹痛、眠気が報告されています(p < 0.001)。

 

米国FDAの安全基準を合格した成分

米国食品医薬品庁(FDA)は、「GRAS」について次のように解説しています。

"「GRAS」はGenerally Recognized As Safe(一般に安全とみなされている)の略語。連邦食品医薬品化粧品法の201条及び409条に基づき、食品に意図的に添加する物質は食品添加物であり、販売前にFDAの審査と認可を受けなければならない。ただし、所期の条件下で使用する限り安全であることが十分示されていると有資格専門家が認めるか、その使用が食品添加物の定義から外れる場合はこの限りでない。"

 

GRAS認証は、安全基準の合格基準を通過した製品であることの証明です。

ベニテングタケ製品で唯一、このGRAS認証を得たカナダのライフサイエンス企業であるPsyched Wellness(サイキッドウェルネス)社の独自開発エキスエキストラクト「AME1」があります。このAME1について、少しご説明します。

AME1とは

カナダのPsyched Wellness社は医師や科学者と共に4年間の研究の末に、ベニテングタケを完全に無毒化し、有効成分のみの独自のエキストラクト「AME1」を開発しました。 

 

AME1には、ベニテングタケの活性成分であるムシモール、イボテン酸、ムスカリンが極微量に含まれていますが、それらの安全性については、GRASの報告書によると、AME1を1日880mg摂取しても安全であると示されています。

製品1mL中に、AME1は27mg含有するため、1本30mLの量とほぼ同等です。

 

加えて、90日間の毒性試験(動物実験)により、NOAEL*を定めました。

この実験を要約すると、以下の通りです。

  • 研究期間中、対象群とAME1を投与された動物の双方において、毒性の有害臨床徴候や死亡、または罹患が観察されませんでした。
  • 研究期間中、全ての性別の全ての治療グループにおいて、体重および通常の体重増加に関連する治療関連の有害効果は観察されませんでした。
  • 研究期間中、全ての性別の全ての治療グループにおいて、摂取に関連する治療関連の有害効果は、処置前の群との比較で観察されませんでした。
  • 研究期間中、血液学的パラメータ、凝固、臨床化学、培検、および臓器重量に関連する治療関連の有害効果は観察されませんでした。研究期間中、検討された全てのパラメータは正常範囲内でした。
  • 有害事象レベルの観察はありませんでした。この重要な情報により、NOAELの決定が行われ、したがって人間の摂取に安全で有効な投与量が特定されました。
*NOAEL(No Observed Adverse Effect Level:無毒性量)とは?
動物試験などで求められた“この量以下ならば病気などの有害な影響が出ない最大量”のことです。

 

AME1を配合したティンクチャー「CALM」

GRASとNOAELによる安全性の合格証を得た、世界唯一のベニテングタケエキストラクトのティンクチャー「CALM」。
カナダのPsyched Wellness社が、4年の研究開発を経て米国で販売開始されました。

米国では、様々なキノコ成分の健康食品がありますが、ベニテングタケについては連邦法で合法(ルイジアナ州以外)のため、人気が高まっています。


しかし、実際にアメリカの市場を観察してみると、安全性評価を実施し食品として正式にFDAに認められているのはPsyched Wellness社だけなのです。

ベニテングタケは古くから伝統的に摂取されてきた歴史がありますが、解毒方法を知らずに摂取してしまうと体調を崩してしまいます。ベニデングタケの製品を購入する際は、その製品が確実に解毒化されているのか確かめてから購入することをおすすめします。

 

 

 

次のブログで、ベニテングタケの働きについてお伝えしたいと思います。

 

References:
https://pharmacia.pensoft.net/article/56112/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7977045/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10142736/

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